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嗟音 爻

#8

ようやく気持ちが落ち着いてきたので、何があったのか書き残しておこうと思う。


事前に立てた計画は上手くいった。

住宅街から少し外れた場所にあるその崖は、周りに視界を遮る木や電灯が無く、夜空いっぱいに輝く流星群を見渡せた。クラスメイトの言っていた通りだ。

僕と爾は、嬉しくなって転落防止用の柵に足をかけ、身を乗り出した。この最高の景色を少しでも長く、もっと近くに感じたかった。


爾が足を滑らせた。咄嗟に手を伸ばしたが、間に合わなかった。

下はコンクリートの道路で、僕らが立っていた場所からは大体5メートルくらいの高さがあった。下を覗き込んで必死に名前を呼んだが、反応が無い。何が起きたのか理解できないまま、急いで爾の元へと駆け下りた。


僕が崖の下にたどり着いたとき、爾は平然と立ち、服についた汚れをはたいていた。息を整えながら無事かどうか尋ねると、いつもの調子で「大丈夫」と微笑んだ。

おかしい。混乱して割れるように頭が痛かった。

あの高さから落ちて無傷のはずがない!

© 2024 笹崎

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